目次
新築木造アパートのメリット・デメリット
結論から書いてしまうと、資産規模拡大を目指す上では、新築木造アパートはお勧めできません。そう言いながら、私も2棟も新築木造アパートを購入してしまいました。詳細はこの記事の後半で書きたいと思います。
失敗ではありませんが、規模を拡大して医師の手取り収入と同じくらいにするためには、新築木造アパートだけでは到達は難しいです。
ここでは私が考える新築木造アパートのメリット・デメリットについて述べたいと思います。
・新築のため10年近くは大きな修繕が不要
・鉄骨造や鉄筋コンクリート造よりも修繕費が安い
・築古アパートよりも満室経営がしやすい
・固定資産税が安い
・5000万〜8000万円ほどでその気になれば医師の給与で返せる金額(1棟投資の心理的ハードルが低い)
・10年後に売却しても築10年なので売りやすい(融資がつきやすい)
・新築木造好きな銀行がいくつかあるため、2棟くらいまでは融資を引きやすい
・団体信用生命保険が必須のこともあり生命保険代わりになる
・新築区分マンションと同様、新築プレミアムな家賃設定をしていることがある
・鉄筋コンクリート造(RC)よりも家賃下落しやすい
・残債よりも積算価格が低い
・耐用年数超えの融資期間
・個人の与信枠を使ったアパートローンが多いため2棟くらいで融資がストップする
・新築であり建設業者や販売業者の利益が上乗せされている
・大和ハウスや大東建託などの大手ハウスメーカーの新築木造アパートと競合する
・一部の都市ではTATERUやシノケンなど大手ハウスメーカー以外でも新築木造アパートが供給され続けている。
ざっとこのような点が挙げられます。
昨今では新築木造アパートの売り込みが強くなっていることから、今回はデメリットについて深掘りしたいと思います。
新築区分マンションと同様、新築プレミアムな家賃設定をしていることがある
新築物件の表面利回りを簡単に上げるには、高めの家賃設定を行えば良いだけです。良心的な業者であれば、保守的な家賃設定を行なっていますが、業者の中には、家賃設定をやや高めにしていることがあります。
言われるがままに購入してしまうと二、三年で家賃を下げる自体になります。簡単な調べ方はSUUMOなどの賃貸サイトで実際に調べることです。新築から築5年目くらいを調べれば十分です。
他にも、業者からもらう事業シミュレーションの中には家賃下落が想定されておらず、新築時の家賃でシミュレーションされていることがあります。築20年の木造が新築時の家賃では埋まりません。
安普請の新築木造アパートで、設備やデザイン等に競争力がない場合には、かなり早くに家賃が下落し始めます。それを見越して早めに売却するオーナーもいます。
鉄筋コンクリート造(RC)よりも家賃下落しやすい
家賃下落率は東京の賃貸マンションで年平均約1%です。一般的にRCよりも木造のほうが家賃下落しやすいといわれているため、物件の設備や場所によっては年2%ほど下落することもあるかと思います。
参考文献:経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由 三井住友トラスト基礎研究所
賃貸マンションで10年経つと1割ほど家賃が下がる予想です。木造だと1割以上の下落の可能性があります。さらに、家賃が下がり表面利回りが低下すると売却時の価格にも影響します。
新築時 物件価格8000万円 家賃年収560万円 表面利回り7%の物件で、家賃年収が1割下がって504万円になったら、同じ表面利回り7%だと物件価格は504万円÷7%で7200万円になります。
家賃年収は56万円減っただけですが、物件価格では800万円(56万÷7%)もの差になります。そのため、出口戦略を考えた時にはできるだけ家賃を下げないような対策が必要になります。
場所も普通で設備も普通な新築木造アパートでは、周りと差別化できていないため、家賃下落は避けられません。
残債よりも積算価格が低い
新築木造アパートや新築RCマンションは、銀行が行う担保評価である原価法(積算評価)が低く出る傾向にあり、銀行によっては債務超過と判断されることがあります。ここが一般的に新築木造アパートが買い進められない理由になります。
ただし、私が自ら銀行開拓を行なって、持っていた新築木造アパートを評価してもらった結果からは、必ずしもマイナス評価にはなりませんでした。
銀行開拓したいくつかの地方銀行では、名古屋市の新築木造アパートは特にマイナス評価ではなく、むしろ収益性を重視してもらいプラスの評価でした。
物件評価に関しては銀行によって微妙な違いがあるため、実際に持ち込んで評価してもらわないと分からないことがあります。新築木造アパートを持っていることが、必ずしもマイナスではないというのが私の経験則になります。
銀行によっては、修繕費用を多めに見積もるため、中古RCマンションのほうが評価が出ないことがあります。例えば、北陸銀行では鉄筋コンクリートマンションの修繕費を多めに見積もる傾向があり、中古RCマンションではなかなか評価が伸びないことがありました。
2018年前半までは、積算評価を重視する三井住友銀行と、積算評価の2倍まで出すともいわれたスルガ銀行が全盛だったため、残債よりも積算評価が低く出る新築木造アパートは、債務超過と考えられていたのだと思います。
三井住友銀行とスルガ銀行が融資をストップした現在においては、主戦場は地方銀行や信用組合、信用金庫に移っているため、新築木造アパートの担保評価はまちまちだと思います。
新築木造アパートが好きな地方銀行はありますし、収益性で評価するりそな銀行も新築木造アパートに融資をします。ただし、最近のりそな銀行は、他行と同様かそれ以上に不動産融資の審査がかなり厳しくなっています。
耐用年数超えの融資期間
木造の法定耐用年数は22年であり、税務上、耐用年数を過ぎた建物価値は0と考えます。銀行でも、耐用年数を超えた物件は担保価値0と考えるところもあります。
表面利回り7〜8%の木造でキャッシュフローを出すためには融資期間22年ではむしろ手出しが出てしまうため、融資期間を30年や35年にしなければなりません。それだけ物件価格が高騰しているということでもあります。
実際には築22年を超えても十分に住むことはできるため、一定の劣化等級を取得すれば30年〜35年の融資を出す銀行はあります。
ただし、築30年を過ぎた木造アパートはそれなりに大きな修繕が必要であったり、家賃下落が大きいため、築年数が経過するにつれて運営が難しくなると予想されます。
また、木造の法定耐用年数は22年としっかり決まっているため、耐用年数が少ないか過ぎた後の物件では、一般的な銀行としては融資を出しにくいので、出口戦略が限られます。
新築木造アパートを融資期間35年で引いたとしても、最後まで持ち切るよりも耐用年数が残っている築10年くらいまでに売却するほうが戦略としては賢いです。
個人の与信枠を使ったアパートローンが多いため2棟くらいで融資がストップする
個人向け(リテール向け)のアパートローンの場合、一定の基準で与信枠が設定されており、それを超える融資はできないことになっています。オリックス銀行では年収の10倍くらい、三井住友銀行なら5億円くらい、スルガ銀行なら年収の20倍〜30倍くらいと言われています。
ここがある意味上限ですが、すべての銀行を使うことは難しく、オリックス銀行で1億5000万くらい借りていたら、よほどの年収や金融資産がないと三井住友銀行は貸してくれません。他行の借り入れを気にする銀行だからです。
私自身はスルガ銀行を使ったことはありませんが、昔のスルガ銀行であれば他行の借り入れはそれほど気にしなかったようです。
私が購入した新築木造アパートの詳細
では、具体的に私がどのような新築木造アパートを購入したのかご紹介します。
1棟目
所在地:愛知県名古屋市西区
物件価格:8000万
家賃年収:600万
敷地面積:180㎡(約54坪)
表面利回り:7.5%
間取り:1K1S 6室+1LDK1S 2室(SはService Room 納戸、ロフトのことです)
融資:オリックス銀行のアパートローン
金利:1.975%
融資期間:35年
頭金:500万
固定資産税(年間):約40万
年間の手残り(税引き前CF):約180万円
返済比率 約50% (当時は返済比率など考えておらず)
2棟目
所在地:愛知県名古屋市中村区
物件価格:8500万
家賃年収:595万
敷地面積:190㎡(約58坪)
表面利回り:7.0%
融資:オリックス銀行のアパートローン
金利:1.975%
融資期間:35年
頭金:250万
固定資産税(年間):約45万
年間の手残り(税引き前CF):約150万円
返済比率:約55%
物件の概要は上記のようになります。占有面積は1K1Sでロフトを入れて24平米です。デザイナーズロフトになっている物件で、よくあるハシゴ式のロフトではないところが好印象でした。
名古屋市は20代の人口が増えていることや新築だから満室になりそうなのと、8000万円くらいなら失敗しても本業で返せそうだという理由で購入を決意しました。
当時は、耐用年数超えの融資や積算価格の低さについては深く考えていませんでした。ただ、比較的良心的な販売業者さんで、他社にあるような定額リフォーム費用や余計な手数料がなく、新築木造アパートの中ではまずまず手残りが出ていました。
逆に安普請の新築木造アパートを建てる業者もいて、占有面積が20平米未満でロフトはハシゴ式、他の新築木造アパートと比べても見劣りする設備で利回り7%や6.5%などもあり、かなり早くに家賃下落しそうな物件もたくさん立っていました。
医師だからこその金利や融資期間だったこともあり、一般のサラリーマンの方ではオリックス銀行で金利2.5%ほど、融資期間30年という条件もあり、それだとキャッシュフローはほとんど残らない計算になります。
私自身は、業者の話を鵜呑みにして、何となく大丈夫そうだという理由で購入してしまいました。結果としては失敗ではありませんでしたが、危険な橋を渡ったと思います。
不動産投資は初期には失敗が見えにくいことが特徴です。不動産業者から言われるがままに購入することは避けてください。この物件なら買って良いかどうか自分自身で判断できるようになってから購入するのが大切です。
偉そうなことを書きましたが、私自身、最初の新築木造アパートを購入した時には自分で賃料相場や賃貸需要を調べたり、仲介店への聞き取りなどは一切行なっていませんでした。
業者に質問はしましたが、その答えを鵜呑みにして自分で事実確認までは行いませんでした。これで失敗しなかったのは単純に運が良かったからです。人柄がすごく良さそうな悪徳業者に出会っていたら、シェアハウスのかぼちゃの馬車を購入していたかもしれません。
スルガ銀行のシェアハウス問題は他人事とは思えませんでした。
【実体験】買い進めたいのに融資はストップ
オリックス銀行のアパートローン(パッケージローン)は、融資金額の上限が年収の10倍程度となっているため、名古屋市の新築木造アパート2棟 約1億6000万円で私の与信枠はすべて使い果たしてしまいました。
販売業者のセミナーでは、新築木造アパートを5棟以上買い続けている人がいるという話があり、具体的なところまで確認せずに信じてしまいましたが、実際に取り組んでみると、融資が出ないことがわかりました。
販売業者側は、TATERUの融資で問題となる山口県の西京銀行に融資の打診をしていたようですが、西京銀行も融資が閉じてしまい、3棟目は購入できませんでした。
当時、銀行開拓はすべて業者任せで、自分一人で行うにはどうすれば良いか全くわかっておらず、販売業者が断念した時点で私も買い進められないと思ってしまいました。
なぜ買い続けられなかったのかまとめると、
①銀行開拓が業者任せで自ら開拓していなかった
②大手銀行のアパートローンで融資を引いたため与信枠が決まっていた
ということが原因でした。
ここで万事休す。しばらくは既存の新築木造アパートの運営を続け、その間に書籍やセミナーで不動産投資を学ぶことにしたのです。
もし新築木造アパートをするなら建売ではなく土地から
健美家や楽待でコラムを書いている大家さんで、新築木造アパートで結果を出している人は、土地を安く仕入れて、周りと差別化したアパートを作っています。そして利回りは10%を超えています。地方なら12%という場合もあります。
業者の建売なら6%〜7%台の地域でも、土地から仕入れて高利回りを実現しています。安い土地を仕入れて競争力のあるアパートを建てた時点で、含み益がある状態です。業者の利益が乗っていない分、安く建てられ利益が大きいのです。
私が買ったような建売のアパートは、エンド顧客向けの物件で建築業者や販売業者の利益がしっかりと乗っています。土地探しや銀行開拓などの手間がかからない分、利益は少なくなっているのです。
もし、新築木造アパートを買いたいのであれば、最終的には土地から仕入れて、割安な建築業者にアパートを建ててもらう形が理想です。高い利回りなら、信用金庫や信用組合で融資期間20年の耐用年数内での運営も可能となります。
属性が良いなら新築木造よりも中古RC
最初に買いた通り、属性が高い医師であれば、当面は新築木造アパートはおすすめしません。このブログでも書いているように、勤務医や開業医であれば、まずは中古RCマンション1棟を購入することをおすすめします。
中古RCマンション1棟買いを続けていき、家賃年収で1億前後となったのであればキャッシュフローも潤沢にあるので、土地から新築木造アパートでも良いかもしれません。可能なら新築S造やRC造に挑戦できれば理想的です。
本業と同じくらいのキャッシュフローを目指したいのであれば、最短は新築木造アパートではなく、中古RCです。繰り返しになりますが、新築木造アパートの積算評価が低いので、何棟か購入できたとしても決算書の内容が良くならず、積算評価重視の銀行や信金、信組からは融資が受けにくくなります。
また、新築木造アパートは10年を過ぎてくると家賃を下げたり、修繕が発生してくるため、売ったり買ったりを繰り返さないといけなくなります。そうなると、事業規模としては大きくならないため、いつまでもサラリーマン大家の延長くらいに思われてしまいます。
中古RCであれば、修繕費はかかるものの築30年あるいは築40年でも十分賃貸可能であるため、売却せずに持ち続けることで家賃年収全体が多くなり、銀行から不動産賃貸業として評価してもらえます。
融資が出にくい一般のサラリーマンの方で、1、2棟購入できれば十分という場合には、新築木造アパートもありだと思います。
一方で、高属性の医師であれば、最初から1億円〜2億円くらいの中古RCを購入したほうが、効率が良いです。
不動産投資でどのくらいの家賃収入が目標なのか?
なぜ不動産投資をするのか?
をまずは明確にしてみてください。
家賃年収で5000万〜1億円を目指したいのであれば、医師の方には中古RCが絶対におすすめです。