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不動産投資の減価償却費や経費により節税できる
病院で勤務していると、◯◯サンスや◯◯リードといった東証一部上場の新築分譲マンション業者から頻繁に営業の電話があります。m3.comでも新築や中古区分のマンション業者への面談や節税セミナーの案内があります。
↑赤字の下線部分が減価償却費を含めた不動産所得の経費部分です
不動産購入時の仲介手数料や不動産取得税、建物の減価償却費により、不動産の所得金額がマイナスになり、医師の給与金額と損益通算できるため、初年度に一定の還付を受けることが可能です。ただし、新築区分マンション、新築ワンルームマンション投資自体は失敗であり、買った時点で損失を抱えていることになります。
不動産投資の世界では、新築区分マンション(特に新築ワンルームマンション)は絶対に避けるべき投資法として有名です。中古区分マンションについても、儲からない可能性があり、あまりおすすめできません。
よほど安く買えなければ、区分マンションは儲かりません。儲かるのは業者だけです。本当に儲かるのであれば、すでに不動産業者が買って転売するからです。
大抵の場合、転売業者の転売先が勤務医や開業医の先生方(エンド顧客)です。
不動産業界では世間知らずの医師や薬剤師、看護師、公務員は情弱なカモとして知られています。
新築区分は業者の利益がたっぷり乗っていて、買った瞬間に7〜8割以下になります。特にワンルームマンションは、専有面積が小さい分、たくさんの部屋を作れるので、業者側にとって効率が良いため、一番多く紹介されている案件です。
業者が儲かる一方で、購入した先生は大損しています。買った瞬間に負けが確定している案件です。勉強代として割り切れる先生は良いのですが、5戸や10戸も区分マンションを購入する勤務医の先生もおられます。
そういった勤務医の先生を少しでも減らしたいと思って、この記事を書いています。
不動産投資の特徴の一つは、大きな金額を長期間のローンを組んで返済するため、失敗に気づきにくいことです。また、勤務医の給与が比較的多いため、多少の失敗はカバーできてしまうことも、勤務医の不動産投資の特徴です。
早めに失敗に気づけば、まだまだ挽回できます。さらに、節税目的での新築区分マンションがなぜ危険なのか深掘りします。
勤務医の新築区分マンション、ワンルームマンションがダメな4つの理由
①キャピタル・ロス
新築区分マンション・ワンルームマンションは、建築業者や紹介する仲介業者の利益がたっぷり乗っているため、購入した瞬間に物件価格が値下がりします。一般的には7割〜8割、物件によっては半値くらいになります。
そんな馬鹿なと思われるかもしれませんが、病院に頻繁に勧誘の電話があるのは、1000件の電話で1件成約するだけでも業者が儲かるからです。
②家賃が新築プレミアム価格
業者が想定する家賃が周辺相場よりも高かったり、新築だからこその家賃設定になっています。2、3年経過すると、家賃を下げないと埋まらない自体になります。周りに同じような差別化されていないワンルームマンションが多いとなおさらです。どんどんと新築区分・ワンルームが供給されているので、家賃下落は必須です。
業者側は売ってなんぼなので、家賃は下がらないと都合の良いことを言いますが、実際には下がります。
SUUMOというサイトで家賃相場が調べられるので一度確認してください。
・大阪中央区の新築ワンルームや1Kの相場
・大阪中央区の築5年以内のワンルームや1Kの相場
新築では1Kの家賃相場7万円ですが、築5年以内を含めると6.8万円と値下がりしています。築10年以内にするとさらに下がっています。ワンルームの項目にも注目すると6.4万円から6.1万円に下がっています。
ただでさえ利回りの低い区分マンションが、徐々に家賃下落し利回りが下がります。しかし、管理費や固定資産税といった経費はほぼ変わりません。
③空室リスクが高い
区分マンションは、満室か空室かのどちらかです。空室になった時には銀行への返済分は持ち出しになります。想定の低い表面利回り(3.5%〜4%弱)さえも達成できなくなります。
銀行への返済のうち、利息分は経費にできるので、業者の言った通りわずかながら節税はできます。
しかし、不動産投資自体は失敗なので節税額よりも大きな損失が出ています。区分所有なので破産するほどではありませんが、汗水流して働いた給与がどんどん減っていきます。妻や子供のためにと始めた不動産投資が、皮肉にもさらに家計を圧迫することになります。
サブリースという方法もありますが、かぼちゃの馬車事件のようにサブリース業者の破綻リスクがあります。また、業者にもよりますが、サブリースにすると満室家賃の2割くらいが手数料になります。毎月の家賃収入が8割になるということです。
④土地の割合がほとんどないため担保評価が低い〜ほぼ無い
不動産投資において、すべてを現金で購入する人は珍しく、ほとんどの場合、銀行から融資を受けます。銀行側の考えとして、融資する物件の担保評価を収益還元法や原価法(積算評価法)、取引事例比較法などで評価します。
特に積算評価法は多くの銀行が採用している担保評価法になります。現在の建物を再調達するにはいくらかかるのかを計算します。
建物は経年劣化で徐々に価値が0になるのに対して、土地の価値は0にはならず、土地が広いほうが積算評価が出やすくなります。
しかし、新築区分マンションでは土地の割合が非常にわずかであり、銀行側からすると担保評価が建物だけになったり、そもそも区分マンションは担保評価としてほぼ無いと判断する銀行もあります。
評価が出たとしても、残債よりもはるかに低い担保評価であり、区分マンションは負動産として、資産ではなく負債と見られます。
そうなると、勤務医の与信枠を使い切ると、それ以上融資を受けられなくなります。区分マンションだけを買い進めている人にとってはそれ以上の損失を止めてくれるストッパーですが、医師の給与並みの不動産収入を得ることは難しくなります。
一方で、しっかりと担保価値の出る物件を購入し運営していくと、不動産事業として評価してもらえ、個人の与信枠に関係なく銀行から融資を引けるようになります。
新築区分マンションの具体例はこちらの記事で書いているので一度ご覧ください。
勤務医の節税目的での築古木造アパートも危険
勤務医が不動産投資で節税しようとした時、もっとも引っかかるのが新築ワンルームマンションです。中古区分マンション投資をしている勤務医の方もそれなりにいるかと思います。
新築ワンルームマンション投資が大多数ではありますが、もう1つ勤務医の節税として勧誘される投資法が築古木造アパートです。木造アパートの法定耐用年数22年を超えると建物部分を4年で減価償却することができるからです。
そうすると、区分マンション・ワンルームマンション投資よりも大きな節税効果が得られるので、高収入の勤務医や開業医、経営者に勧められることがあります。
ただし、こちらの記事で具体的に書いたように、築古木造アパートは高リスクの投資法であり、初心者の勤務医が取り組む手法ではありません。様々なリスクがあり、ワンルームマンション投資よりも大損する可能性があります。
節税を抜きにして純粋に不動産投資として考えると、築25年の木造アパートを購入して減価償却を使い切り、長期譲渡になる6年目に売ろうとすると、築31年になっています。
築31年の木造アパートを買う投資家は限られていますし、そもそも銀行が融資をしてくれません。買ったら最後、損失を生み続けることになります。節税目的にも投資目的にも築古木造アパートは絶対に買ってはいけません。
勤務医の節税でプライベートカンパニーを作ったほうが良い?
勤務医の節税で、プライベートカンパニーを作る方法もあります。1つは本業の給与の節税を狙ったMS法人(メディカルサービス)です。MS法人を作って、病院からの給与やアルバイト代を法人に支払ってもらうことで、税率を下げたり、家族へ給与を支払うことで所得の分散を行う方法があります。
小規模企業共済など法人は節税方法がたくさんあります。
個人の医院でMS法人に実態があり、異様に高額でなければ認められているようですが、勤務医の場合には実際には難しいと思います。
勤務医は成果物に関わりなく一定の給与が支払われているため、医師個人の給与として見なされる可能性があるからです。
税務署に租税回避行為と見なされれば、追加で税金を支払わなくてはなりません。また、給与の支払いを法人口座にするので、勤務先の理解と協力が必要になります。
そういったリスクがある中でMS法人を作っても節税できる金額はそれほど多くはないと思います。私は、妻名義の会社を所有していますが、MS法人ではなく不動産を所有するための資産管理法人(プライベートカンパニー)です。
本業の節税は行なっていません。
勤務医の先生であれば、リスクのあるMS法人ではなく、不動産所有のための資産管理法人(プライベートカンパニー)を作られて、しっかりとキャッシュフローの出る収益不動産を1棟所有したほうがお金は残ります。
そういった投資のための資産管理法人(プライベートカンパニー)を設立するのはおすすめです。個人で不動産を所有すると、不動産収入と給与収入が合算されるため、初期には減価償却で還付が得られても、その後は高い税率になります。
勤務医のための節税本やブログには要注意
「勤務医のための〜」「医師のための〜」と書かれた節税本や節税のブログは世の中にたくさんありますが、その多くが不動産業者が書いた本やブログです。しかも、買ってはいけない区分マンションを勧める業者がほとんどです。
私も何冊か買いましたが、最終的に区分マンション投資を勧める内容になっています。不動産業者の営業本になっており、googleで調べたほうが良いくらいです。ブログについても、区分マンションの業者が運営しているものがあり、真に受けて区分所有を買ってしまうと、節税効果が軽く飛んでしまうほどの損失が出ます。
勤務医は節税せずに収益不動産を買う
確かに、プライベートカンパニーを作って奥様を代表や社員にして、本業の所得を分散できれば節税につながります。ただし、常勤の勤務医の給与は成果によって収入が上下する訳ではないため、プライベートカンパニーの所得として計上できない可能性が高いです。
また、勤務先にも協力してもらい、給与の振込先を法人名義にするなどの工夫が必要になります。あまり現実的ではないため、私としてはお勧めしません。
長期的な視点で時間とお金に余裕を持たせるのであれば、収益不動産の所有を目的としたプライベートカンパニーがおすすめです。一般的には資産管理法人と呼ぶことがほとんどです。
ただ、基本的に従業員を雇う必要はなく、ご自身やご家族だけのプライベートな会社になります。
勤務医の先生で節税を調べられているということは、少しでもご自身やご家族のためにお金を残したいと考えていると思います。お金を残したり、増やしたりすることを目的とするなら、方法として一番おすすめなのが中古RCマンション1棟投資です。
ただし、キャッシュフローが出る不動産かどうかを見極めなくてはいけません。区分マンションや築古木造は最初の投資としては避けたほうが良いですが、中古RCマンション1棟物であっても、買ってはダメな物件のほうが多いです。
ご自身で買って良い物件かどうか見極められるように基準を持つことが大切です。
なぜ勤務医は節税せずに地方中古RCマンション1棟を買うべきなのか?
簡単に列挙すると…
・勤務医の社会的信用は高く銀行から高額な融資を引ける
・少ない自己資金で大きな融資を受けられるのでレバレッジが効く
・戸数が多いマンション1棟ほど空室リスクが低い
・土地も含んでいるので銀行の担保評価が出る
・RC(鉄筋コンクリート)造は耐用年数が47年と長いので融資期間が長くなりキャッシュフローが出やすい
・木造アパートに比べ家賃下落が少ない
・木造アパートよりも鉄筋コンクリートマンションのほうが入居付けしやすい
・相対取引なので売主の事情や交渉次第で市場よりも安く購入できる
・家賃は経済変動を受けにくい
・首都圏に比べ地方のほうが利回りが高くキャッシュフローが出る
・建築費の高騰で賃貸用の新築鉄筋コンクリート造マンションが供給されにくいため、ライバルが少ない。
・地方でも中核都市や特定の場所は20〜30年で消滅することはなく満室経営が可能
ただし、上記のメリットを得るためには、物件の目利きや交渉、現地調査といった作業が必ず必要になります。地方高利回り中古RCマンションだからといって、すぐに買ってはいけません。業者から紹介されたままに購入してはいけないのです。
例えば、私が購入した地方RCマンションの中には、4億円という価格のマンションもありますが、最初に業者から紹介された時には4億8000万円でした。そこから売主の事情や仲介業者との協力で4億円にまで下がりました。
かぼちゃの馬車問題でスルガ銀行が融資をストップするまでは、勤務医の先生の中には、業者に言われるがままの価格で地方中古RCマンション1棟を買ってしまった先生もおられます。
スルガ銀行の4.5%の高金利融資で、しかも価格交渉せずに高値で買っており、結局は、区分マンションよりもリスクが高い投資になっています。
そういったことにならないよう、最低限の知識を書籍やブログで学んでいただければと思います。
逆に、しっかりと目利きができるようになると、節税で戻ってくるお金よりもはるかに多い金額が銀行口座に残るようになります。
さらに良いことは、毎月毎月銀行に返済を行うことで、融資残高が減り、売却時には大きな利益として引き出すことができます。物件の中に貯金をしているような状態になります。
2016年以前に物件を購入していたサラリーマンが、2016年〜2018年頃の売り手市場において、5000万〜1億円の売却益を得たという話は良く聞きました。もちろん、譲渡所得に税金がかかりますが、それでもまとまった現金が残ります。
勤務医の先生は節税を考えるよりも、1棟物の収益不動産投資を学ばれて、資産となる不動産を買われたほうが、お金を失わずに資産形成ができ、時間にもゆとりを持つことができます。